11月27日(土)、第8回スポーツセーフティーオンラインシンポジウムを開催いたしました。 『国際大会から考えるスポーツ安全管理体制』をテーマに、世界トップレベルの国際総合競技大会において 様々な役割で活動された講師の先生方をお招きし、大会における実際の取り組みをご共有頂きました。 今後我々のスポーツ現場にどう活かすことができるかをスポーツ現場に関わるすべての方々と一緒に考える機会となりました。
講師:
- 細川 由梨(早稲田大学スポーツ科学学術院)
- 加藤 基(帝京大学スポーツ医科学センター)
- 岩松 真理恵(公益財団法人日本バスケットボール協会)
- 松井 康(国立大学法人筑波技術大学)
- 佐保 豊(NPO法人スポーツセーフティージャパン 代表理事)
プログラム内容
SPORTS SAFETY LEGACY~国際大会から考える今後のスポーツ安全管理体制~
10:00-10:05 オープニング
10:05-11:05 国際総合競技大会における熱中症の安全対策について 細川由梨氏
11:05-12:05 東京2020陸上競技会場におけるFOP(Field of Play)メディカルとしての役割とその実際 加藤基氏
12:30-13:30 東京2020オリンピック競技大会バスケットボール競技における感染対策の取り組みについて 岩松真理恵氏
13:30-14:30 ブライドサッカーにおけるメディカルサポートについて- 国際大会を経験して- 松井康氏
14:30-15:00 パネルディスカッション
開催概要
- 日時: 2021年11月27日(10:00-15:00)
- 開催場所: オンラインセミナー
プログラム内容報告
細川 由梨氏
早稲田大学スポーツ科学学術院 准教授
「国際総合競技大会における熱中症の安全対策について」
2019年にIOC Adverse Weather Impact Expert Working Group for the Olympic Games Tokyo 2020のメンバーと東京オリンピックパラリンピック組織委員会のアドバイザーに就任された細川氏に国際総合競技大会における熱中症の安全対策についてお話していただきました。
一般的な日本国内の現状を無視し、グローバルスタンダードである労作性熱射病への対策をそのままマニュアルとして現場に落とし込むのではなく、実際の競技会場に赴き、会場別研修を実施し、競技ごとの特性を考慮し、競技のサポート経験のあるスポーツドクターや看護師、メディカルスタッフと意見交換しながら会場ごとに実践的なマニュアルを作成していかれたお話を聞くことができました。
また、現在は五輪に限らず夏季競技の世界連盟が参考にできるような実践的なガイドラインを細川氏が執筆中されているとのことなので、この実践的なガイドラインが発表され、トップレベルだけではなく、子供たちの草の根スポーツでも実施できる対応が日本で普及することを期待しています。
加藤 基氏
帝京大学スポーツ医科学センター 准教授
「国際総合競技大会陸上競技におけるFOP(Field of Play)メディカルとしての役割とその実際」
日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部の委員であり、スタンドに配置し全体を俯瞰するFOPスーパーバイザーとしてFOPメディカル活動の調整を行った加藤氏に、国際総合競技大会陸上競技におけるFOPメディカルとしての役割とその実際についてお話していただきました。
加藤氏は、①陸上競技の特殊性、②陸上競技会でのFOPメディカルの取り組み、③TOKYO2020でのFOPメディカル活動、そして④TOKYO2020のレガシーと今後の活動に分けて解説していただいたため、これまで陸上競技で活動したことがない方やFOPメディカルの活動について知らない方にとっても、TOKYO2020でのFOPメディカルの活動がイメージしやすく講演が進みました。
講演中に加藤氏が強調していたと感じた点は、FOPメディカルと審判の方々との連携やコミュニケーションの大切さです。
今後の日本陸連FOP救護活動の1つとして、大会規模に合わせた体制準備としてのFOP救護活動のマニュアル化とお話されていたので、日本の陸上競技会だけではなく、陸上以外のスポーツイベントでの救護活動にも参考となり、日本のスポーツイベントがより安全な環境になることを願っています。
岩松 真理恵氏
公益財団法人日本バスケットボール協会 女子代表専任アスレティックトレーナー
「東京2020オリンピック競技大会バスケットボール競技における感染対策の取り組みについて」
女子日本バスケットボール代表チーム専任のアスレティックトレーナーである岩松氏に、東京2020オリンピック競技大会バスケットボール競技における感染対策の取り組みについてお話していただきました。
感染対策の取り組みで一番気になったのが、『48時間ルール』(移行期間)の適用です。代表選手の所属先でのチーム練習と代表活動参加直前と直後に48時間の移行期間を設けることで、拡大を防止することができる対策です。
この対策を徹底するには、選手自身の理解だけではなく、所属先のコーチングスタッフや選手たち、関係者全員が理解して協力する必要があります。
この1つの対策からも、日本のバスケットボール界が一丸となって感染対策そして、TOKYO2020に向けて取り組まれていたのだと実感することができました。
また、岩松氏の選手たちとのコミュニケーションでの気遣いやコーチングスタッフとの信頼関係が構築されていることが分かるエピソードを聞くことができました。
松井 康氏
筑波技術大学保健科学部保健学科理学療法学専攻 講師
「ブラインドサッカーにおけるメディカルサポートについて -国際大会を経験して-」
ブラインドサッカー日本代表のトレーナーである松井氏に、ブラインドサッカーにおける国際大会でのメディカルサポートについてお話していただきました。
健常者サッカーと比較して、ブラインドサッカーにおける特徴的な傷害である頭頸部と顔面のケガの実際のシーンを動画で解説していただきました。
中でも試合の勝敗までも左右させたかもしれない出血への対応や喉のケガに関してはとても貴重なお話でした。
松井氏には、ブラインドサッカーにおける外傷のお話だけではなく、選手の最高のパフォーマンス発揮を引き出すための暑熱対策も具体的に紹介していただきました。
どの暑熱対策も、トップレベルでしかできない対策ではなく、日本の部活動でも実施できる対策でした。
パネルディスカッション
NPO法人スポーツセーフティージャパンの佐保が加わり、最後にパネルディスカッションを実施しました。
まずスポーツセーフティーシンポジウムの恒例となっている外傷・障害レポートを佐保よりさせていただきました。
株式会社ユーフォリア様のご協力のもと、外傷・障害発生調査を実施し、今年は対象チームが289チームとなり、外傷・障害登録件数は、7,766件となりました。
また、外傷・障害だけではなく、One Tap Sportsの感染症対策を行っているチーム数も選手数も増加しており、TOKYO2020に参加したチームだけではなく、日本にいる様々なチームが感染症対策を実施していることが分かります。
パネルディスカッションでは、参加者からの質問や佐保から質問させていただき、各講師の方々からお答えいただきました。
協賛企業
- 株式会社ユーフォリア
- エフビートライアングル株式会社
- ファーノ・ジャパン・インク日本支社
- 酒井医療株式会社
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